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29 視線

last update Date de publication: 2026-02-06 21:16:50

 その時だった。

 なんだか背中がぞくり、として私はハッとして辺りを見回した。

 ここは宮廷内の庭であるし、内部の者なら誰でも入ることができる。実際、少し離れた所を通り過ぎていく女官の姿が見えるし、いつの間に現れたのか警備兵の姿もある。

 けれど今の視線は彼女らのものとは思えない。

 あの視線、あの感じは戦場で何度も感じたことがあるものだ。

 ――殺気。

 けれど誰が?

 やはり女官の中に事件の犯人がいるのだろうか。まさか警備兵?

 そう思って警備兵を見るが、彼女らから殺気は感じない。

 その向こうにいた女官はすでに姿がないし、あの女官とも限らない。この庭は木が多いし、どこかに隠れているとか?

 そう思うとなんだか落ち着かないが、殿下をおいていくわけにもいかないし、どうしたものか。

「……シュエファさん、どうかされましたか?」

 心配げな声がして、私はばっと振り返り殿下を見やる。

 彼は不安そうな目を私に向けていた。

 殺気を感じた事を伝えるか一瞬悩んだが、確証もないため私は首を横に振り、笑顔を作る。

「いえ、視線を感じたので誰かと思って……警備の兵がこちらの様子を伺っていました」

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